圧倒的に走ってく

基本的には行ってきたライブのこと。たまにCDと本と諸々の話。

五十年後のあなたへ

サノメVS@四谷天窓。

禍中のライブ復帰は四谷天窓となった。
まだまだ不安は残る中、これは絶対行きたい、と思った天野花とさのめいみ。のライブ。

ギザギザの模様が特徴的な建物。階段を上っていくと、もうそこにある。
整理番号順に整列するものの、まず人が少なすぎて焦る。
私も天窓じゃなきゃおそらく来ていないことを考えると、それも致し方ないことではある。

入場するや否や、本人確認と消毒。なるほど…自主的ではなく強制なところに禍中感がある。
カウンターもビニールに覆われていて、ドリンクを貰うだけでも緊張感がある。
席を決めた時点で、目の前のビニールのカーテンが気になった。
演者と客を隔てるビニールのカーテン……今の時世には必要な物。気にはなるけど、仕方がないことだ。

天野花

まず現れたのは天野花さん。
まったくの初見で、なんだかほんわかした人だなというのが第一印象。
第一声。
少しハスキーが入った歌声。
ほんわか……していない歌詞。
これは流石に想定外。

そして何より、MC。
茄子の味噌汁が食べたくて、コンビニに買いに行って、
ポットのお湯が無かったので天窓まで持って来て、
「お湯ありますか~」ってわざわざ聞いて、
満を持してお湯の蛇口をひねると、お湯が傘のようになり、カップに一滴も入らず、結局食べられなかったと……

たまたまその場に居合わせたさのめ氏、爆笑。それにつられて花氏も爆笑。二人合わせて爆笑。
会場はふふっとなった。しかし文字にすると割と野暮だな…
語り口と間合いは重要である。

そんなMCの後に、とんでもない人に騙される歌。
…うん、勝手に借金する恋人は駄目だろう、そりゃあ。男女その他問わず。

『わがまま言いません!借金のない人がいい』

いやどんな歌詞よ…。

そんな曲の後には、またMCを少し。
しかしその話はここには書かない。

とりあえず他人の顔見てそんなこと言う奴はぶん投げられちまえ。とだけ。

しかし初見のはずなのに聞き覚えのある声だったな、と思ったら渋ラジに出ていると知って納得した、という後日談。

さのめいみ。

続いては今回の主催者(?)さのめいみ。さん。
有観客でライブを行うことも少なくなり、人と会うこと自体が減っている、という話から。
人と会わなくなったら、あまり笑わなくなった。
「……いや、さっきの茄子の話、今週一……もしかすると今月一ぐらい笑ったからね」
やっぱり人と会うことは重要だと。

……確かに茄子の話、花さんかさのめさんから聞かないと面白さ8割減ぐらいなので、直接会いに来るのは大事である。

MCが終わると、天窓の壁が青くなっていき、『water』。
『寄り掛かった白い壁が僕のせいで黒い影を落として』
『ごめんねって泣いたって誰も許しちゃくれない』
繊細な歌詞と、綺麗な音の数々。
この曲めちゃくちゃ好きだな…と改めて思う。

闇が光になったり、決別の歌であったり。
音に酔っていると、もう終わりが来てしまう。

仮に、このまま健康に平均年齢まで生きられるとしたら、人生は大体あと50年ぐらい。
会いたい人にはあと何時間ぐらい会えるんだろう?と気になって、計算してみた。
そうすると、仮に週一で会ったとしても、会える期間は3年ぐらいだと分かった。
週一じゃ会えないことも多いだろうから、実際は、もっと少ない――

だから、会いたい人には会っといた方が良いな、と思ったという話からの、『日々』。

『繰り返し何度も、思いますが、続いてく日々が一番美しいこと』
『日々は繰り返し、奇跡など一つもない』
『けれど、あなたと生きることを――』

禍、だから。禍、だからこそ。
頭がぐちゃぐちゃになって、しばらく動けなくなった。

50年後。
どうなっているかも分からなすぎて、いっそ笑えてしまう。
ライブには行けるだろうか。音楽はどうなっている? ライブハウスは?
そして何より、自分は? 推している方々は?

まさか50年後を見据えている人が居るなんて。
とりあえず足腰は鍛えておこう。50年後も楽しめるように。

なんて言っていたら、その日に重大ニュースがあって、その後天窓グループの閉店を知らされて、
ああ、会いたい人には会っておいた方が良いな、と改めて思うことになったのは、なんという皮肉やら。