圧倒的に走ってく

基本的には行ってきたライブのこと。たまにCDと本と諸々の話。

ひとりぼっちはもうひとりぼっちじゃない。

12/24の四谷天窓からちょうど一ヶ月。
気になっていたさのめいみ。さんのワンマンに行ってきました。

想像以上に、歪んでいるけど凛としていて温かい空間でした。

手売りのチケットというものを初めて買った。
とてもシンプルな青いデザインに、本人がサインを入れて完成するチケット。
とても特別に思える。
が、本人はそれを買った人数分書いているというのを忘れてはならない。
その上、物販を1500円以上買うとサイン色紙がついてくる。これもまた手書き。
……手が疲れそうだ。アーティストは大変だ。
ともあれ、特別感のあるワンマンライブ。
行く前から期待を高めて、整理番号順に並び。

会場に入ったところで、四枚の紙を受け取った。
宣伝フライヤーだな、とロクに中身も見ずに折りたたみ。
物販に寄ってみると、傍らに手作りのポストが。
これが前々から呟かれていたやつか、と少し見入り。
ドリンクカウンターに行って、席を選んで。
諸々を終えて、手持ちぶさたに。
そこでやっと、紙を開いた。
フライヤーは二枚。一枚はアンケート、そしてもう一枚。
本人からの手紙。

「最悪読まなくてもいい紙」と題されたその手紙は、
さのめいみ。という人間の世界にのめり込むには充分な力を持っていた。

会場から開演までは長く感じるもの。
しかし今回、あっという間に過ぎてしまった。
読み入っている間に開演時間。
……開演時間通りに始まらなくて、ちょっと心配してしまったのはここだけの話。

会場が暗くなり、紙を閉じ。
いきなりのバンドセットで始まり、思わず上がるテンション。
そしてキーボードの前に降り立つ精悍な女性……さのめいみ。

……お客さんがめちゃくちゃ大人しい。

聴き入るタイプの曲なので、もちろん騒ぐ必要はない。
に、しても大人しいような……

ファンはアーティストの鏡という言葉があるように、アーティストの性格はお客さんに現れやすい。
先ほどの手紙から感じ取った性格から、おそらくは感情をあまり表に出さない方々で、心の中でものすごく燃えているに違いない。
郷に入れば郷に従え。
背筋を伸ばして、凛とした雰囲気を……
……纏うことは無理なので、背筋だけを伸ばした。

『ライト』のライトが精神的にも物理的にも眩しく、息を呑むこと数曲。
時に放り投げられ、時に水中に落とされ。
歌詞にノストラダムスアリストテレスが出てくる歌、初めて聞きました。
圧倒されていると、彼女はこの曲を作った経緯を語りだす。

その衝撃的理由はここには書きませんが、
なぜか会場には笑いが溢れていました。

……あれ、あそこにいらっしゃるの、あの歌を歌っていた方ですよね……?
顔も声も同じ、なのに歌と喋りでまったく違う……!

現在事故物件に棲み、取り憑かれやすい体質だというさのめさん。
実は既に取り憑かれているのではないか。
それぐらい、雰囲気が違う。歌と喋りで。

恐ろしいまでの憑依型。
ライブが進むたびに、その底知れなさに溺れていく。

「『最終回』を見るのが嫌なんです」
「――生きづらいと思っていたら、私、人間じゃなくて『サカナ』だったんだって」

そのワンフレーズを聞いた時、水槽の中の光景がありありと浮かんで。
天窓で聴いた時より、深く深く心を捕えるその歌詞と歌声。

「もし、『タイムマシン』があったのなら……」

過去にも未来にも行けるとしても、涙するのは普通の『日々』。
これ以上は、きっと記憶だけに残しておいたほうが良いと思うので、ここには書きません。

気が付いた時にはちょうど8ヶ月後のワンマンのチケットを手にしていて。

帰り際、手作りのポストに溢れんばかりのメッセージが入れられているのを見て、柄にもなく温かい気分になりながら、帰路に。

……頭ふわふわしていたのでアンケート出し忘れたのと盛大に道間違えたのは内緒です。


セットリスト付きクリアファイルの、これ他の公演でもあって欲しい感は異常。