圧倒的に走ってく

基本的には行ってきたライブのこと。たまにCDと本と諸々の話。

限界冥土

欄干わたり東京ファイナルに行ってきました。
もはや安楽浄土の5秒前。

詳しいネタバレから逃げ回って、向かったファイナル。
読んでいた中から情報を要約すると、
・寺の音響によって神秘的な雰囲気がする
・リクエストを元に組んだセットリスト(中身は見ていない)
・すごい
・とにかくすごい
などと完全に全容不明の状態。
我ながらよく逃げた。よし、ほめてつかわす。

住宅街のど真ん中に座するお寺、稱名寺。
かなり現代的な佇まい。日本というよりもっと東南アジア系のお寺の様相。
降っている小雨のために傘がずらーっと連なっていて、それだけでも少々面食らいつつ、開場時刻。
住職が靴袋を渡すたびにお礼を言っている。いや、お礼を言うのはこっちです。

本堂内に入ると座布団が目に入り、続いて金色、それからキーボード。
うお最前空いてるよ!と走り出したくなるのを抑えて、あくまでも平静を装う。お堂を走るな。そんな歌はありません。
最前まで来ると、景色が変わった。遠目からは見えなかった赤いろうそく。仏具の金色が眩しく、その中央には仏様が鎮座している。背筋が伸びて、正座しなきゃいけない気がした。
が、5分で諦めた。これじゃあ歌に集中できない。後ろの方にも迷惑。

赤いろうそくに火が灯される。どうしても思い出すのは「赤いろうそくと人魚」。
人魚の恨みの籠もったろうそく。御堂に上がれば大時化をもたらす赤いろうそく。
気のせいか、雨音が強まった気がした。

住職が奥からやってくる。
法話というものを初めてまともに聞いた。要約すると、
頑張れば報われる。良い人間は極楽へ、悪い人間は地獄へ。
皆さまは仏様にそう期待する。世知辛い世の中。そうであって欲しいと願う。
しかしここにいらっしゃる仏様は、全ての人間に分け隔てなく救いの手をさしのべる。
本当の仏様は、差別や区別をしない。善人でも悪人でも。どんな人間でも。
立派だ。立派すぎる。仏になる修行を途中で挫折する人が多いのも頷ける。なんまんだぶ。
敷かれたレールは嫌だ!とか言って飛び出しちゃうのかな、とか考えちゃってすみません。なんまんだぶ。

なんまんだぶは仏様を呼び出す言霊。
祈っていると日食さんが来る。仏様の光臨か。迷惑にならない程度に背筋を正す。

一曲目、『foreseer』。
予見する、予知する、それを見越す、などの意味。
何処か遠くを見るような目線。ゾッとしつつ、既にその世界にのめり込む。
『君の痛みを軽減できはしなくとも』
『限界明度の光でいい』
全てを見通す予見者が、予見できなかったこと。見通せなかった明日。
予想外の事態とはいつだって隣り合わせ。
おそらく君は…と考えて身震いする。こんなことさらっと歌っちゃうんだから日食さんは怖い。お寺の雰囲気と相まって余計に。
そして歌詞カードを改めて見て聴き間違いに気が付いた。
ずっと『限界冥土』だと。余計に怖い。

二曲目、『エバーシルバー』。
リクエストで一番人気だったそう。日食さんご本人にはあまり思い入れが無いそう。うおぉい。
灰色、なんて呼ばせない。その名前は、エバーシルバー。
いつもこのフレーズ、「、」の部分でゾクッとする。
そしてPerennialを聞いた今だから思うのは、なんとなくコンセプトが似ている?ということ。
見方が違えば、違う色に見える。当たり前を見直す。
……うろ覚えが悔しいので早く歌詞カードを下さい。

三曲目、『お役御免』。
散々語り尽くされたでしょうが、やはり「寺で安楽浄土の五秒前」。
巻き舌も絶好調。気持ちは無事安楽浄土。

四曲目、『天井のない部屋』。
5/15にも聴いたこの曲。
お寺で聴くとより哲学的に思える。
ただ、「体を捨てて見事空へ飛ぶ」というフレーズがお寺だと死を暗示しているように聞こえてしまうのが問題。
そんなことはないと思うんですが。

五曲目、『開拓者』。
……実はここの記憶を失念している。
youtubeに動画が出ているのでそちらを見た方がわかりやすいかと(露骨な宣伝)。
ひとつ言うなら終演後、「これ10代で作るってどんな10代だよ!」の声が乱舞していたことを付記しておきます。

六曲目、『11年』。
元々木魚の音が入っている曲だから、これは絶対あると予想はしていた。
木魚の音を全部足で。
それは予想外……!
ついつい足ばかり見てしまう。ここだけ切り取るとよくない。
だって、裸足……!裸足でペダル……!
寺だから当たり前とはいえ、裸足。足ばかりじっと見る。ここだけ切り取るとよくない。
歌も佳境。
sing well の赤い照明と、言っていた台詞を思い出す。
照明はないけど赤い蝋燭はある。人魚の恨みの象徴。恨み。あまり深く考えてはいけない。

七曲目、『夕立』。
アレンジが途轍もなくて、イントロの段階ではなんの曲か分からなかった。
『雨音に紛れて死に絶える程泣く時』のフレーズに突入した途端、気のせいか雨脚が強くなったように思えた。
誰かの心にも雨が降る。

八曲目、の前に、チャーリーと呼ばれた先生の話。
その先生は面白い先生だったが、ある日突然亡くなってしまった。
前日まで楽しそうに笑っていた。それが幼き日の日食さんにはいたく心に残った。
その経験を元に作られたのが、この八曲目。

『あしたあさって』。

「あなただってまさか死ぬだなんて考えても居なかったんじゃない?」
「だから何も恐れずあんなに真っ直ぐに生きたんでしょう?」

生きている以上、いつだって死と隣り合わせ。
経緯を知ったことで、その歌詞が、より深く深く心に刺さった。

ちなみにこの『あしたあさって』、もう一つ秘密があるそうだが、
これはここに来ていた人だけの秘密としておく。

九曲目はリクエストでも相当票が入ったという曲。
しかしこの場所でこの曲を歌うのはいかがなものか?と日食さんも少し悩んだと。
仏様が見守るこのお寺。その仏様の目の前で。

『神様お願い抑えきれない衝動がいつまでも抑えきれないままでありますように』。

少し笑いが起こったのは言うまでもない。
仏様に許可を取りに行く日食さんがなんとも素敵だった。

十曲目は『大停電』。
お前らが一度は陥るという「鼓膜のkomaki現象」……
これはすごい。本当に聴こえた(幻聴)。

十一曲目、十二曲目は『100』と『非売品少女』。
リクエストを元に、とは言っていたが、この二つは個人的に繋がっていると思っていたからびっくりした。
羨望や嫉妬の対象となる『あの子』。『なんであの子が前に居るんだ』とまで言わしめる『あの子』。
火花散らして切磋琢磨する『あの子』……
個人的には思い当たる方は一人だったんですが、最近もう一人増えました。
……誰とは言わない。

アンコールはなし宣言に深く頷きつつ、もう最後の曲。

『うぬぼれる、事なかれ主義は1,2,3でどん底へゆけ』
『ポケットに入る石ばっか集める毎日は楽しいかい?』

歌というより、日食さんからの問いかけとも言えるこの曲。
お寺という場所も相まって、説法のようにも感じた、長いようで短い時間。

以下、入ったタイミングを失念したので一気に箇条書き。

・指パッチン。境内では音がきっちり届く。好きです。
・座布団。近くのあの寺この寺、かの有名な築地本願寺からも。
 座布団の色によってどこから来たのか分かるらしい。その場の何人もが足元を見る。いや見ますよそりゃ。
・おはよう靴下。東北の方の方言。靴下の穴から指が出ていること。
「靴下から指がオハヨウ(裏声)してないかい?」
 知っていたから尚更笑えた。見ていて良かったケ○ミンショー。
・「公式グッズで作ろうか?靴下」
いや買いますよ靴下。買わせて下さい。あと欲を言えば雨具。525円の安い屋根でいいので。
・「楽しいね。欄干わたり」全語彙力が行方不明。たぶんその場に居た全員その笑顔にやられてる。

そうして、もうお帰りの時間。
靴袋を返すと住職がお礼を……いやお礼を言うのはこっちですって。この場を御用意して戴いてありがとうございます。仏様にもお伝え下さい。
心の中では土下座していましたが、迷惑千万なので一礼に抑えて、思い出の品をいくつか押さえて帰りました。日食なつこのファンは帰るのが速い。アスペラトゥスで言われたことを体現すべく。

ただ、余韻に浸りすぎて駅の入り口失念したので、実際だいぶ帰るの遅れました。
……いやー、前だけじゃなくて後ろと上も見といた方が良いですね、という話でした。

それから江戸川橋駅。もうちょい入口を派手にしても罰は当たらないと思います。仏様は罰を当てないそうなので。