圧倒的に走ってく

基本的には行ってきたライブのこと。たまにCDと本と諸々の話。

世にも恐ろしいことに

NakamuraEmiさんのライブに行ってきました。
NIPPON NO ONNA WO UTAU LIVE……まさにその通り。
文章少々重めです。

開場前。ライブと言うより仕事帰りの人々という雰囲気の人だかり。
老若男女、整理番号の記された旗の下で待つ姿を見た後ろの方、
命名:「高尾山の登山口」。
言い得て妙に吹き出しつつ、入場。

入ってまず思ったのは、
結構前の方が空いてるな…ということ。整理番号遅めだったにも関わらず。
いや、いいんですか!? 真ん前空いてますよ!?
と一瞬思いましたが、見方なんて人それぞれ。とりあえず前ありがとうございますと頭を下げつつ。
開演直前にはちゃんとライブハウスらしい人集りになっていました。なんだったんだあの隙間は……

会場が一瞬暗転、
視界を横切る真っ赤なつなぎ。

いや、近いです。なんでここ空いてたんだ自由席マジック。
整理番号なんて関係ありません。こんなマジックがあるなら。

一曲目、『Don't』のワンフレーズ目。
仕事帰りの人間の心をがっちり掴む、どんな立場の人にも一瞬「うおっ」となるフレーズ。
いきなり右ストレートかまされたところで、

『大人を言うことを聞け』からの、『バカか私は』。

大人から子供(と、その真ん中)に向けた歌から、『大人になって尻もちついた』人の歌へ。
説教臭くも聞こえる歌詞なのに説教臭くなくて、感じるのは人間臭さ。
『この曲も聴いて捨てろ』→『一刻も早くトイレに流しちまえ』
この流れはすげえ。

根がネガティブなので、自分を鼓舞する歌しか歌えないというEmiさん。
そういや三谷幸喜も同じようなこと言ってたな……とちょっと関係無いことを思いつつ。

お次はフェスで毎回雨を降らしたという逸話から生まれたという『雨のように泣いてやれ』。
だからグッズが傘チャーム。粋です。
普段は泣けないひとも、雨の中なら泣けるだろうって。
雨の中なら泣いても分かんないだろうって。
いや、語彙力!

ここで入ったMCは
ストーカー?に追われたところをおむかいさんに助けられたという話から自分が職質受けた話まで。
いや、振り幅!

そして近況報告として、お友達の子供を待ち受け画面にしていたら、まったく知らない人から「可愛らしいお子さんですね」と言われたという話など。
ああもう、破壊力!

三つとも次の曲に繋がる話なんですが、どれもこれも破壊力が高い。

人を頼っていいことを知った歌と、二十代のころは考えなかった生き方について、考え直す歌。
ギターを操る先生だったというEmiさんは、子どもたちとも距離が近く、色々と思う所がある様子。

『なんちゃって 全部、もしものはなしです。妄想のおはなしです。』
『私の勝手な夢みたいなものです。』

そうは言いますが……いや、皆まで言うまい。
そして何より、曲終わりの、時計の針の音。
こうしている間にも時間は進んでいるし、タイムリミットは近付いている。
歌詞の内容も相まって、背筋が伸びた。
あとで確認すると音源にもしっかり入っていましたが、全く気付いていませんでした。ライブ演出の妙。

『めしあがれ』と『甘っちょろい私が目に染みて』

母親の立場に立って台所に立った歌と、1000円で買ったワンピース、を着た『私』の歌。
母親の代わりに台所に→自分の過去を顧みる
のような流れだと思うのですが、
実を言うと、この二曲に対する記憶が薄いんです。
理由は泣いていたから以外に考えられないんですが、というよりそれが全部です。すみません。
『めしあがれ』に関しては初聞きで、終演後そのままCD販売に走りましたということだけ補足しておきます。

○『痛ぇ』

この歌は、Emiさんがまだ別の仕事をしていたころ、月~金まで社会人として働いて、土日は死んだように眠りながらプロデューサーのカワムラさんの車で音楽の場へと引きずり出されていた時に生まれた歌だそうで。
というより既にこのエピソードがかなりすごいんですが、何でもないように言ってらっしゃいますが、このエピソードだけで数時間話してもいいレベルだと思うんですが、本題はそこではなくて。
プロとしてやっていくことに自信が持てなかった頃、今のマネージャーとなる人と出会い、あるミュージシャンのライブに連れていかれた。
そのミュージシャンの名は竹原ピストル
衝撃を受けたEmiさんは今の事務所に入った、というエピソードから、この『痛ぇ』という歌が生まれたんだそうで。
『重たい重たいピストルで撃ち抜かれた』
『その言葉は世界に撃ち込まれる』
てっきり言葉の強さについて歌った歌だと思っていたんですが、そういうことならこのフレーズは納得。

「皆さんは、会うと背筋が伸びる人を思い浮かべながら聴いてください」

と言われたので、思い浮かべたのは言うまでもなく。
でもピストルで撃ち抜かれるというより氷の刀でバッサバッサ切り捨てられるというイメージですが。
去年の炎上交際大阪、やっぱ行っとけばよかったなあ、と今更。

『ばけもの』よ『かかってこいよ』

『この人は私を幸せにはしてくれない』という衝撃的なフレーズから始まるこの歌。
女性が抱える社会問題などをこれでもかとぶち込んで、解決方法は結局自分にしか分からない、と締めくくられる歌の直後に、『かかってこいよ』。
『敵はそいつじゃない』『敵は自分の弱さ』。
そう言い聞かせ、理不尽なことを我慢し、涙を流す弱さを捨てて。
らしさを捨てた私。明日も頑張ろうって言う私。
不安はお風呂で流したつもり。
前向きなばけものと化した自分を打ち負かせるのは、『世にも恐ろしいことにややこしい私』。

この二つの歌、混ぜるな危険。
いえ、『ばけもの』=世間で、『かかってこいよ』とも取れますが。
というかたぶんそちらが合っている気もするんですが。
しかし
『ばけもの』=女
だと歌詞にしっかり書いてあるので、要するにそれは

と負のループに突入するのでそれ以上考えるのはやめました。
いや、どちらの解釈にしても、ですが。

『明日もちょっと頑張ってみますか』

……これを肯定と取るか、疑問符と取るか。
とりあえず一回立ち止まって休もう。頭が痛い。頭痛が痛い。

『女の友情』がこだまする

『女の友情なんてわかりにくいさ』
『女の友情、ハムより薄い』

女性を取り巻く環境が変わろうが、付き纏うそんな風評。
そんな状況を、
『そうでもねえよ 捨てたもんじゃねえよ』
と肩をがっちり掴んで言ってくれるこの歌。

今回はサビの部分を男女で交互に歌うバトル方式。

……どちらが勝ったか? いえ、勝ち負けの話ではないので……
ただ、両方を応援するEmiさんの笑顔が素敵だったことは報告しておきます。

そして決着直後の代表曲『YAMABIKO』の貫禄たるや。
会場は一体、気がつけば恐ろしいほどのノリに。
明日もちょっと頑張ってみますか。肯定的な方向に解釈して。

アンコール

言いたい箇所が多いので箇条書きで失礼します。

・つなぎの上からツアーT着てキャップ装着して「ペンキ屋さんみたいになっちゃいました」というEmiさんかわいすぎません…?
・そのままちょこまかと動き回る姿、歌声とのギャップ激しすぎません……?
・暗転する前に「曲を相棒にしてくれたら」って言ってたことの伏線回収…!
・ポストカードが売れ残っているので事務所の先輩、かつ「柄が狂気的だな!」とdisった秦基博さんに全部送り付けるという鬼畜…素敵の所業
・気づかい!とてつもない気づかい!
・だからカワムラさんのエピソードの破壊力!赤ペン先生
・ベース!パーカッション!ベース!ぱ、パーカッション!?

下手に文章にしても伝えきれません。
全国民……いや全人類見よう。無理強いはしませんが。

そして終演

アンコールが終わり、拍手とともに退場……
かと思いきや。
「この間だけ、写真撮影……」
写真さ、ぐらいで会場どよめき。
誰も彼彼女もスマホを取り出し、撮り出し。
そりゃそうですよね。
目に焼き付けたいのと思い出として残しておきたいのと。
どっちを取ればいいのかなんて贅沢な悩み。
『カメラに全部残すの 夢より現実派だもの』。
……ちょっと皮肉入って聴こえるのはご愛嬌。

「それから、入口にあるお花なんですけど……」
「私じゃぜんぶ持って帰れないので」
「一本だけ残しておいていただければいいので!」

どこまで気づかいの人……
嬉しさの共有。
終演後、言っていた場所に向かうと、
ほとんど真緑になった花達の姿が……

そりゃそうだな、と思いつつ、会場を出ようとすると、
今後のライブ予定のフライヤーと共に、Emiさんからのお手紙が。

ライブ来た人全員に渡してるって? 素敵過ぎますってそういうところ。
なんでお手紙書いて来なかったんだとちょっとの後悔と、
何を言っても薄っぺらくなりそうなぐらいの感情の山と。
ありがとうございます。

やっぱり全国民……いや全世界来よう。無理強いはしませんが。

……あ、撮った写真ですか? 余韻で滲んでぶれっぶれなので……
(※ただの写真下手)