圧倒的に走ってく

基本的には行ってきたライブのこと。たまにCDと本と諸々の話。

巡り合う軌跡に溺れて

巡り合う軌跡を描いて。@新代田FEVER。
明くる夜の羊初ワンマン。大きな始まりになりそうだぞ…と思ったライブでした。

それまでの軌跡

2021/12/10、2マンライブで発表された明くる夜の羊初ワンマン。
こんなん行くしか無いでしょうよ!
とその場で手売りチケットを取っての、今日。

3月か…先だな…とか思っていたのがもう今日である。
そういえば丁度明くる夜を知ってから1年にもなるが、未だに客層が読めない。いつぐらいに行くのが相場なんだろうか?
先行物販もあることだし、まあ時間が余れば現地で潰せば良いか、と新代田へ。

無事物販を済ませ、時間が40分程余った。
いつもならこれぐらいは会場で待つのだが、対策ガチガチな場で長居はしづらそうだったので、外に行くことにした。
が、ここである問題が。
周囲に何もない。
道を挟んでコンビニ(※休憩スペースなし)。
少し行くとガソリンスタンド。
もっと行くと謎の会社。道の端に来たので引き返す。
今までの逆順。
そして逆の道にもコンビニ(※休憩スペースなし)。
少し行くとスーパー。
…近距離にコンビニ・スーパーが密集している…ライブの待ち時間以外だったら便利そうだな、と思いつつそのまま歩く。
もう少し行くと美容院。
茶店(※その日休業)。
道の端まで行くと、コインランドリー。
…コインランドリーで待つことも考えたが、クリーニングするものも無い状態でそれは不審者だ。
仕方ないので引き返し、対策ガチガチの会場に戻る。
少しばかりの探検は何もないがいっぱいだった。
これからは開場15分前ぐらいに来よう…と心に決め、呼び出しが始まるのを待った。
さすがにこれぐらいの時間になると居ても場違いということは無い。

開場からの軌跡

入場すると、こんな光景だった。
青い…
手売りという事もあり、左寄り前方に行くことが出来た。
ここでどんな光景が見れるんだろう、と思っていると、BGMが耳に入った。

『今日が終わる』
『羊を数えて…』

いつかの空蝉の『夢で逢えたら』だ…やっぱりこの曲は暗いのに気分が高揚する…と思っていると、開演時間。

入場して来る四人…この位置だとベースのナツキさんの目の前だ。
と、始まる前にステージ中央に集合している。これは明くる夜の羊の、儀式のようなものらしい。
拳を突き合わせている様子すらはっきり見えてしまう位置…既に見入ってしまう。

一音目、なんだこれは、と思った。
目の前で見るナツキさんは、ベースでぶん殴って来るような弾き方をしており、少し面食らう。
カワノユイさんの爽やかながら力強い声。
クラシマさんの空を斬るようなギター。
アユムさんの全てを劈くようなドラム。

「――ここに居る全員が初ワンマンです!千葉県佐倉市から来ました!明くる夜の羊です!よろしくお願いします!!」

MOSAiCの時も格好いいと思ったその音は、更に格好良くなっていた。
釘付けになっているところで、二曲目『初恋』。
この曲は向かい合う恋人ではなく、隣で一緒に笑う恋人を描いた曲で、頭に情景を浮かべると微笑ましいのに、音がそれを微笑ましい以上の"何か"にする。

MCがほぼ無い構成で、四方八方から音で殴られる状態。
追いかけ始めて1年…とはいえ、まだまだ曲とタイトルが一致しない。
4曲目と5曲目がとても好きな曲調で、ぐんぐん引き込まれる。(後で調べて『リプレイ』と『影の行方』と知った)

『愁いも汚い感情も全て飲み干せてしまえたなら』
『不甲斐ないね 穴だらけのこの自分を』
『埋めてやれるのは誰だ』

歌詞の一つ一つがズシリと伸し掛かる。
音だけでなく歌詞でもぶん殴ってくる。

全てが加速するような『レイス』。
『ワールドエンド』の時には会場が真っ暗になって、「もしかしてこのまま終わるのだろうか…」という危惧を持った。

『全てが始まる朝が来たみたいだ』
『…おやすみ』

しかし、こんなところで明くる夜は終わらない。

『あなたの痛みに触れるのがこわくて気付かないふりをした』
『そうやって手放してしまった痛みもあなたなのだと知った』

『どこまでも続く 終わりのない日々を 大丈夫 僕らならきっと――』

今まであまりピンと来ていなかった、『花と枷』の歌詞が、『ツインレイ』と合わさって、ぶっ刺さる。
ここで、カワノユイが口を開く。

「他のバンドみたいに、ついてこいとかは言えないけど、」
「側に居続ける、隣を歩くようなことなら、できると思っていて、」
「"誰か"じゃなくて、他でもない"あなた"に届けたい!」

『主人公になれなかった』。

この曲は、主人公にはなれない、と悟った人の、決意表明のような曲だ。
どんなに絶望しても、歌い続けると決めた。
呪い(のろい)のような、呪い(まじない)のような曲だ。
世界がどんなに変わっても、例え終わったとしても、明くる夜は歌い続ける。

音と歌詞と、四人の四位一体。
ゾクゾクしているところで叩き込まれた新曲は、更に凶暴な音をしていた。
もうこの時点で終わっても誰も文句は言わないだろう…と思っていたところに、更に畳み掛けられる。

『悲しみに暮れる夜があっても』
『あなたがあなたを殺さずに居られるように』

『燈した先に』。

決意表明は伊達じゃない。
明くる夜の羊は、きっと、音楽を作り続けてくれる。
この四人なら、どんなことも乗り越えてくれる。

音が消えた後も、鳴り止まない拍手。

アンコールと共に、重大発表。
楽しそうに言うその発表は、2マンライブ。
やっぱりもうその先が決まっているんだな…と頷きつつ、アンコール曲が始まる。

優しくも強い曲で、頭の中に桜が舞い散る。

『言葉にすれば想いなんて』
『忘れてしまうから』

『あなたの生きる全てを照らせるように』

ああ、そうだ、だから――

その後の軌跡

ライブが終わり、ロビーに戻ってくる。
その足で物販に行き、その先も追走することを決めた。
3ヶ月後か…楽しみだな…と思いながら後にした、視線の先、

FEVERの奥にあるカフェスペース…

…ここがあったのなら開場前に彷徨い歩く必要は無かったのでは…?
何もないがいっぱい、ではなかった。
視野の狭さを反省しつつ、チケットを鞄にしまった。