圧倒的に走ってく

基本的には行ってきたライブのこと。たまにCDと本と諸々の話。

廊下よ、走れ

グロック2022GW@渋谷各地。
別名:渋谷大運動会。
とはいえ、移動範囲はそこそこに行ってきました。

参加したことは無かったけど名前は知っているフェス個人的第三位(※一,ニはフジロックとロッキン)
それがこのハグロック
女性アーティスト限定のフェス…というのは知っていたが、本当にそうなんだな…と貰ったタイムテーブルを見ながら思った。

タイムテーブルの裏の地図を見ると、ライブハウスの密集具合に改めて驚く。

着いた時間が時間だったので、昼を食べて(そしてタイムテーブルと相談して)からの参加となる。凄いぜサ○ゼリヤ!

ずみを

開始はチェルシーホテルから。サイゼ○ヤをエンジョイしてしまったので、途中からの参加になった。
二人体制…なのだろうか。
ドラムバキバキ、ダブルボーカルのような不思議な音。
なんだかど偉い歌詞だ…と思っていたら終わってしまった。
み、短い…歌詞カードを読んでみたい感じがする。

めばゑ

さて次はどうするか、と考えて、チェルシーホテルから二階分上がり、THE GAMEへ。
近未来の監獄…という印象を受けた。
…何故だかは分からない。

やって来たのは小柄な女性。
この会場のトップバッターだから、とのことで、まさかの準備運動スタート。
「フェスは走るもの」だからだそうだが…なんて人だ。

「ザリガニでバズったんで、今日のネイルはザリガニ仕様」
とのMCからの『ホワイトタイガー』でがっちり掴んで、そのままぶん投げられる。
パワフルでキラキラエフェクトをまとっていた…凄く面白い人だ。言うならば主人公タイプ。

「――さあ、私が終わったらフライヤーだけ持って走るんだよ!」

ザリガニネイルでびしっと出口を指差し、お客さんを促す。
「物販? あるけど走れよ! サーキットだぞ!!」
言うなれば女性シンガーソングライター(と、その人を聞きに行く人々)のお祭り…時間の限り走り回ってこそだ!

ということで、廊下が走るフェスが始まったのである――

にゃんぞぬデシ

THE GAMEから駆け降りると、スターラウンジの扉が開いていたので、タイムテーブルも見ずに滑り込んだ。
にゃんぞぬデシ…名前は聞いたことがある人だ。

もう時間が半分過ぎていて、途中から。
なのだが、一瞬で引き込まれた。
しっとりした歌声の中に感情が見え隠れ…かと思ったら高音で叩かれるような。
芯が強い…というのだろうか。
途中からだったのですぐに告知タイムとなったが、これはワンマンを見に行かないと後悔するような気がした。

…のだが、日程的に難しかった。
こればっかりは縁である。

そっとスターラウンジを後にし、また走り出した。

廊下、止まる

しかし、初にゃんぞぬデシの衝撃か、次に見ようとしたアーティストの低音が凄すぎたのか、急に走ったからか、その全部か。
少しふらっとしたので、休憩する事に。
とはいえ、せっかくのハグロック
幸いドリンクチケットも残ってるし、休憩できそうなライブハウスに行く事にした。

vessy

やって来たのは渋谷gee-ge.
このハグロックに参加している中で、唯一椅子席があるライブハウスである。
(※後から調べた所UNDER DEER LOUNGEにも椅子席があるらしいです)
これまた途中からとなってしまったが、後方席が空いていたので、そこに座る。
聞こえてきた音で意識が揺らめく…いやこれ少しまずいのでは、と思ったのだが、その感覚は体調不良だからでは無かった。
音の主…vessyさんと云うらしい。
英詞の多い歌詞に少したじろぎ、ポエトリーリーディングに更にたじろぎ。
独自の世界観を確立しているような雰囲気。
心地の良い響きと微睡み。照明が青なことも相俟って、深海に居るような気分になった。
この空気に触れられて良かったな、と深く椅子に沈んだ。

亜ノあこ

休憩はもう充分な気もしたが、気が付くともう次の方が準備を始めていた。
何処に行くかも決めてなかったので、そのまま聴き続けることに。
そうしてピアノを弾き始めた亜ノあこさんは、今回一番驚いた方だった。
それ言っちゃって大丈夫ですか!? と思うようなMCを連発しており、会場は常に爆笑。
(ここにはその内容を書いていたんですが、ニュアンスが大事なので、文章にするとおかしな捉え方されそうだな、と思ったので割愛)
語りの関西弁の小気味よさと、凄みのある歌のギャップ。
そのペースに乗せられて、どこまでも行ってしまいそうな。
次の時間が迫っていたので、物販には寄れず。A4サイズで刷ってしまったという手売りチケット…見てみたかった…

〝美根〟

体力も回復したので、スターラウンジに走った。
次は、絶対に見たいと思っていた、改名後初ライブの〝美根〟さん。
走ったのでリハーサルから見られた。
スターラウンジの雰囲気に合っている…そう思った。
『朝が来る』の途中のところは相変わらず合唱したい感じがする。
『さよなら起承転結』の音が相変わらず面白くて、MCも絶好調。歯磨き粉…
ワンマンの宣伝をさりげなく(?)織り込むところは流石。
名前が変わっても、美根さんは美根さんである。
無理してでも聴きに来て良かった。

小林未奈

〝美根〟さんの余韻もそこそこに、続いてやって来たのは小林未奈さん。
そんなことある!?が起こった回。
『大丈夫について』で心を掴まれ、偽物の人生を生きる『ドッペルゲンガー』にグッと来る。
この歌声は、周りを明るくさせる歌声だ。
楽しんでいると早くも最後の曲で、ありがとうございました、もそこそこに、会場の人が散っていく。

が。

再びステージに現れる小林未奈さん。なんと、時間配分を間違えたんだそう。裏に戻ったら、まだ時間10分ぐらいあると言われ、大焦り。
「まだ、会場から出ないで!!」
とはいえ、もう何人かは退場している…という訳で、その場に残っていた人だけの為に、チャンスのもう一曲。
「天国に行った人はきっと楽しいから帰ってこないんだ」
という衝撃のMCから始まる可愛らしくもとんでもない歌詞の、『少しバイバイ』。
亡くなった人は、あちらの世界を楽しんでいるから、会うことが出来ない。私はこっちの世界をもう少し楽しむから、まだ行けないけれど。

…しっかり泣いてしまって、残っていて良かったな、と深く頷いた。

フジタカコ

放心状態のまま立ち尽くしていると、続いてやって来たのは。
真っ直ぐな背筋、真っ直ぐな歌。
フジタカコさんだ。
掻き鳴らされる音に、既に引き付けられる。
しかし、そんな音に負けない、何度聞いても圧倒される歌声と、その歌詞。

特に印象に残ったのは、『非才能宣言』。
「才能あって凄いね」から湧き上がる負の感情…
天才、と呼ばれる人も、裏では努力をしている。

そんな努力を、「才能」の一言で、無碍にするのか。

軽々しく言ってはいけないよな…と思いつつも、自分も何処かで言っていたかもしれない…と自省した。
この人は今見なくてはいけない人だ…これからも積極的にライブに行く。そう決めた。

そして同時に、ある決意を固めた。
…準備運動しなければ。

藍谷凪

スターラウンジから走り、再びgee-ge.へ。
既にリハーサルが始まっていた。
今回ハグロックに行こうと決めた一番の要因の人…藍谷凪さんだ。
空いている後ろの席に再び座り、その綺麗な音に浸る。
物凄く泣いた後だと言っていたが、そうは思えない歌声。
『CreepMellow』で何故か笑いが起こっていた。…本当に何故だ。
今回の『君がくれた花束』の色は…白い色をしていたような気がした。
聞く度に印象が変わる曲で、その都度楽しくなったり辛くなったりする。
今回は優しく響いた。
頭に浮かぶ白い薔薇はどんどん巨大化し、そして散ってゆく。
…儚い。
それも含めてこの歌の優しさなのだろうか…と考えていると、もう時間が過ぎていた。

野坂ひかり

『君がくれた花束』の世界に浸っていると、もう次の時間に差し掛かる。
野坂ひかりさん…初めて見る人だ…名前は聞いたことがあるけども。
切実系シンガーソングライター…不思議な肩書きだと思ったが、歌を聞いてなんとなく分かった…ような気が…しないでもない(分かってない)。
バイオリンとギターとグランドピアノという割と珍しい構成で、途中入る語りには凄みというのか、恐ろしさまで感じた。
全ての恨みを込めたような、たまに見せるギラリとした眼付きに射抜かれ、動けなくなる。
気を抜いたら魂抜かれそうな。
これはヤバいな…と思っていると、会場がフッと明るくなる。
…もう時間だ!
拍手もそこそこに、gee-ge.を飛び出した。

走れ廊下

4階から階段を降りて、横断歩道を渡り、急いでスターラウンジ…の傍らの階段を駆け上がり、THE GAMEへ。
当初の予定では、藍谷凪さん以降は走らずにgee-ge.に居続けるつもりだった。
しかし、先ほどフジタカコさんを見た時に、ギターを、天野花さんのギターを聞きたい!と思った。
何故かは分からない。
しかし直感が告げる。
やっぱり聞かなきゃ終われない!!

天野花

THE GAMEに滑り込むと、リハーサルギリギリ。
呼び込む朗らかな声を聞くと、やっぱり来て良かったな、と思えた。
フェスだからかやけにアンケートが多く、
「ずっとGWが続いて欲しい人!」(手を上げる)
「その理由が上司と上手くいかないからだという人」(手を上げるか迷う)
からの『Booing』で会場が真っ赤になる流れに痺れた。
ギターを抱えるように歌う姿を見て、この姿が見たくてここに来たんだな、と気が付いた。
真っ直ぐな背筋で真っ直ぐに歌う人を見たから、今度は、少し猫背で、少し捻れた歌を歌う人を。

真っ赤から真っ青になった会場での『群青』の格好良さや、MCのあれこれが楽しかった。

「被ってなかったら、Sめいみ。さんの方行こうとしてた人!」

…というアンケートにはたじろいでしまったが。

(某Sさんには)「よろしく言っておきますね」
「…よろしく言っておくは違うか」

…もしよろしく言うならタイムテーブル作ったハグ…いや何でもないです。

走らない廊下

天野花さんの最後の曲が終わり、THE GAMEを飛び出した。
この時間なら、某Sめいみ。さんがまだ歌っているかもしれない。
階段を駆け降り、横断歩道を渡り、階段を4階分駆け上が…ろうとしたが、足がヤバくなったのでエレベーターを使った。

…下手に駆け上がるより早かった。ビバ・文明の利器。

さのめいみ。

gee-ge.の前に辿り着くと、音漏れで『日々』のサビが聴こえた。
…良かった、まだ歌ってた。

そっとギターを模したドアを開けると、黒山の人集り。
行った所だと最大の人入りだった。
…天野花さんと取り合ってのこの人集りだということは、もし被ってなかったらgee-ge.に入りきれなかったんじゃないだろうか。
これは本当にハグさんによろしく言わなきゃ…(?)

青い空間を掌握したようなさのめいみ。さんは、何処か楽しそうに見えた。
来るまでに雨に降られた、という話からの、晴れた新月の夜の『カタコト』。雨も届かない水底の『water』から『Squall』に流れていく様子になるほどと思う。
…gee-ge.の人は、何故か水属性の人が多い。

雨のようにじわじわ染みていき、もう少し聞きたい、というところで終了したので、またライブに行きたいと思った。
物販に寄り、ワンマンのチケットを手にした。

…これでまた、聞きに行ける。今日聞けなかった分も。

まきちゃんぐ

さのめいみ。さんの物販が長引き、もうそのピアノの音が聞こえていた。
実はここで帰るつもりだったのだ、翌日の事を考えて。
しかし、その歌声が、そうさせなかった。

『空と君のあいだに』のカバーから始まるというまさかの構成。
伸びのある声が波紋のように広がっていく様子が見えた気がして、頭がボーッとした。
一度聴いたら忘れられない歌声に、終始息を呑んだ。

「…最後まで残ってくれてありがとう」

と歌われたその歌、『シャドウ』は、影も光も肯定してくれるような歌詞で、心を掴まれる。

帰り際、お客さんがぼーっとしているのが横目に見えた。
そりゃそうだ、あの歌声を聞いてしまえば。
ああ、私も、今日の最後をgee-ge.にして良かったです。

足が疲れていた事も忘れて階段を駆け降り、写真を撮った。

…なお、翌日、ちょっと寝坊してもう一度走ることになったのは、また別のお話。

〜今回のタイムテーブル〜